生活圏からみる広域のまちづくり
   
  
1、 生活圏と広域のまちづくり

市町村合併についての議論が聞こえるようになったが、その地域に暮らす住民が合併を考える主役であり、地域の生活や生産活動がどのような範囲で維持形成されているかを踏まえて、広域的にまちづくりを捉えるという視点が重要と思われる。
 
 広域的なまちづくりは、地域経済の衰退、人口の減少、少子高齢化が進む中で、地域の連携によって効果的な役割分担と相互補完を図りながら、地域の活力や魅力を高めていく上で大きな意味をもつ。この半世紀にわたるモータリゼイションの発達と交通網の整備、ライフスタイルの変化は、人々の生活行動圏を大きく変えた。そこで、地域の生活を生活圏という圏域で捉えてみたい。
 
 地域の生活は基本的に、買い物や通勤、通院に加えて、ゴミ処理や上下水道、消防などの行政サービスを始めとする種々の機能によって維持され、さらにこれらの機能は多様な生活圏を形成している。各生活圏は、基本的な生活機能を充足させる通勤圏や通学圏、第1次商圏などの比較的狭い範囲の圏域から、生活の質を充実させたり、生産や交流を活発にする、高次医療圏、第2次商圏、空港圏などの広域的な圏域までその態様は多様で重層的であり、市町村の行政区に収まるものもあれば、より広い範囲で形成されるものもあり、時間の経過や経済社会環境の変化によって変遷する。

     
 
2、 生活圏の維持形成を目指した広域まちづくり

生活圏の維持形成のためには様々な機能や社会基盤が必要となる。特に医療福祉やゴミ処理などは地域生活の維持に不可欠な機能として位置づけられ、その圏域の設定は住民生活に大きな影響を及ぼす。合併議論には行財政の効率化が前提とされている面もあるが、自治体を「総合行政主体」として位置づけると効率的な規模が問題となり、その解決策として合併があるかのような議論になりやすい。

 住民が生活圏について理解を深め、地域の将来像を描く過程で、個々の課題に対して行政区域についての議論とともに、協議会、事務組合、広域連合、条例による政策連携、あるいは合併などのしくみを議論する必要があるのではないか。すでに、河川環境保全のための流域の政策連携や観光振興に取り組むための広域連合も発足している。地域にとっては、この議論の過程が重要であり、地域への魅力を共有することにもなるのはないか。

「フロンティア180NO.37.2001