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過去の記事 |
「福祉車両を知っていますか?」
「福祉車両」という車
車社会が当たりまえとなっている今、障がいのある人、高齢で少し身体に不自由がある人、また、そのような人と暮らしている家族にとって、自動車は生活の足として、買い物や通院、あるいは仕事など、欠かすことのできない移動手段です。そこで、最近は福祉車両という車が開発され、販売されるようになってきました。ここでは、福祉車両と、道内にそれの開発に取り組んでいる小さな企業を紹介します。 福祉車両には大きく分けて二つの種類があります。障がいのある人を乗せる車(介護自動車)、障がいのある人が運転する車(自操式自動車)として開発されています。でも、障がいのある人の身体状況は様々で、一般に販売されている福祉車両そのままでは、ユーザーの満足が得られない場合が多く、利用するためには細かな技術調整が必要になります。また、高価な福祉車両の代わりにマイカーを福祉車両に改造できたらと思うユーザーも多いようです。有限会社イフ(帯広市)は、利用者の立場に立ったものづくり技術で、このようなニーズに応えている企業です。
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◆福祉車両の開発をはじめた経緯
初めて福祉車両を造りたいと思ったのは20代。突然、身内が脳溢血で倒れ、身体の自由が利かなくなったことから、仕事の相棒でもあり友人でもある木戸口正次さんと「いつかは自分達で車椅子のまま乗れる車とかつくりたいな・・・」。酒を片手に、なにげなく語り合った夢が現実のとなり、平成15年福祉車両のプロショップ「イフ」を立ち上げた内藤さん。
前職である鰍gKS北海道サービスで身につけた「特殊技術」+「それを求めている人々」=「社会貢献」という構図が心にあり、福祉車両に注目した。実際に稼動した直後に強く感じたことは「この仕事の中心は人と人とのケアであり、メンタルサポートを含めた[移動手段]に関する総合相談窓口が必要なんだ。その中で自分の[技術]は単なるアイテムの一つでしかない・・」と語る。
社名「イフ」は、「もしも、こうなったら」と思うユーザーの悩みや不満を解決するという意味でつけられた。
◆利用者の声
−−事例1−− 自宅の軽自動車の助手席を取り外しできる車いすに
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会社勤務中に倒れた男性は、退院後、ガイドヘルパーの資格を持つ妻や娘、息子に介護してもらっていた。 妻は「上肢、下肢ともに全般的に不自由な身体になることはわかっていましたので、早くなんとかしなければとあせりました。」と、当時思っていた。最初、帯広市の委託送迎を頼みましたが、男性は身長180pもあり、小さな車には乗ることができませんでした。今度頼むときは、大きな車を指定してくださいといわれたそう。「いつも大きな車が空いているとは限らないことや、デイサービスへの送迎も待っているよりは、自分で用意したほうが楽なので思い切って車を買うことに決めました。 福祉車両の購入や改造に興味を抱いて模索していた折、「イフ」がお手伝いしていた「上嶋自動車」さんのイベント会場で内藤社長に出会い、新古車のワゴンを買い求め、助手席がそのまま車いすになるユニットを付けるころになりました。このユニットは「イフ」自慢の改造事例のひとつ。メーカーの福祉車両には存在しないパターンで車いすから車への移動動作がいらない、快適なもの。 「まだ1回しか利用していませんが、脱着に慣れれば、きっと使い勝手のよいものになると期待しています。」と妻は言っている。
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−−事例2−− 手で運転する「足代わり」の愛車
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Nさんは、「潜在生脊髄破裂症による両下肢機能障害」という先天性の重度の障がいがありながら、もちまえの明るさで、障がい者のスポーツ指導員の資格を取得し、今は、アーチェリーの障がい者の全道大会で銀メダル、一般参加の十勝地方の大会で、金メダルを取る腕前。大会会場へも車で移動している。
イフは、まず、アクセルは左アクセルにし、ひざに負担をかけずに足を伸ばして運転できるようにと、シートレールを低くした。そして、助手席に積む折りたたみ式の車いすを、ハンドルの上をまたいでスムーズに外に出せるよう、脱着式にして、ハンドルを外すことで車いすを車外に楽に移動することができるようにした。また、運転で多少のやんちゃぶりを発揮するため、身体が転げないように座位保持用シートベルト付きのシートに交換。片手で回せるハンドルを駆使し、自在にどこへでも自分で運転して行けるようにした。
なんでも1人でするには、上肢の筋肉を鍛えることが必須。車いすから車への移乗も、ほどんど手だけで行う離れ業を見せてくれる。アーチェリーの選手だけあって、日頃から相当鍛えてる模様。 とにかく楽しむことが大好きなNさん。今後もいろいろ工夫や改良を重ねていきたいという。
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◆すべての人の「もしも・・・」を叶えられる車づくりへ
福祉車両と聞くと、どうしても障がいを持つ人や介護する人たちだけのための車だと思いがちだが、安全な乗り降りのためのアシストグリップや補助ステップ(自動、手動)、車高を上げ下げするアクセサリー的な装置などは、足腰が弱ったお年寄りや小さな子ども達をさりげなく助けてくれる。
代表の内藤さんは「自分達の持っている技術を活かし、福祉車両を”創る”ことそが、これからの自分達が全うすべき道」だと確信し、体の不自由な方々の切なる思いを叶え、ニーズに応えていきたいと語る。
◆過去の記事
1.「アートホテルズ札幌」
2.あまとう
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